神栖市の風力発電を見学

 恒例の年頭見学会は、洋上風力発電所として稼働している茨城県・神栖市のウインドパワー社。昨年は横浜の石炭火力発電所でCO2排出を抑える最新技術を見学しましたが、今年は化石燃料を使わない再生エネルギーの中でも、ヨーロッパなどで注目されている風力発電をぜひ勉強したいということです。1月9日、朝霞から約2時間かけて到着した神栖市は鹿島コンビナートにも近い場所ですが、千葉県を含めて長く続く海岸線―鹿島灘は砂丘で有名な風の強い海岸線として知られています。そのため10年以上前からここに風力発電所いわゆる風車が建設されてきたという歴史があります。

 ここに立地するウインドパワーグループの風車群は鹿島灘に面した海上に並んでいます。洋上といっても海岸線から数メートルの距離です。このため風車をごく近くで見上げることができますが、この日は雨模様の曇り空なのに風がほとんどないという天候のため風車の羽根はほとんど動いていませんでした。それでもウインドパワーの元気な女性専務(小松崎さん)に近くの砂丘の上にある高台から並んで風車を見ながら説明を聞くことができました。

 風力発電は環境負荷の少ない効率の良い発電方法として注目されていました。特に近年は北欧では大規模施設が建設され、全世界では再生エネルギーの18%近くを占めるまでになってます。ただし、日本ではそれほど普及はしていません。課題がありそうです。

 近くで見上げてみると実に巨大な羽根です。発電所の高さ60メートル、ブレード(羽根)の長さが40メートルあるそうで、ここには15基の発電所(風車)があり、合計5300万kwhの発電能力があります。これは一般家庭の15000世帯分の電力をまかなうことができる能力になるそうです。その他にこの鹿島灘地域では千葉県方面まで伸びる海岸線に50基の風力発電所(風車)が設置されているそうですが、われわれが見ている海岸のやや沖合にも30基の洋上発電所が設置される予定で今年から工事に入るとのことでした。

 風力発電はエネルギーコストが低いことが利点なのですが、半面、風のない時あるいは強すぎる時(3メートル以下あるいは15メートル以上)は発電できないことや建設に適した遠浅の海岸が少ないこと、さらに風切音などの発生もあり、立地が制限されるなどの制約があります。また、日本では再生エネルギーの促進政策が遅れたため、現在、風躯力発電所の建設は国産メーカーではできなくなってます。現在の設備は国産ですが、これは建設が10年前のためです。これも今後の大きな問題だと思います。

 それでも小松崎さんは「2011年の東北大震災のときにもまったく影響なく発電を続けました。すでも10年以上の実績があります。風力発電の可能性は大きいです」と今後の抱負を語ってくれました。この海岸では年間平均風速6~6.5メートルの風が吹くそうです。風力はもちろん、水力、太陽光、地熱などを交えた再生エネルギーが日本中の電力網で結ばれるようになれば、季節や昼夜にかかわらず安定した電力が供給可能になります。まだ時間はかかりそうですが、こうした未来が想像できます。

 鹿島砂丘の一郭に建設された風力発電所ですから、海外線に沿って銚子まで走るバスの中から多くの風車が見えますが、同時に、鹿島砂丘の景観もよくわかります。砂丘はマツなどが植樹されかなり緑化が進んでいますが、今でもかなりの苗木が植えられているところをみると砂との戦いは続いているようです。神栖市内では自動ドアの開閉が制限されているという話も聞きました。観光客としては興味深い景色ですが住んでいる人にとっては大変なことなのです。

 午後は利根川を渡って銚子漁港に移動、休憩して朝霞に戻りました。

2020/1/24