東京湾岸で唯一の発電所(横浜・磯子)を見学

 あさか環境市民会議恒例の新年見学会ですが、今年は横浜市磯子区にある磯子火力発電所を見学しました。日本においても、将来の主力電源は風力や太陽光、地熱などの再生エネルギーになるといわれていますが、それまでの間、あるいはバックアップ電源として、石炭火力発電は必要な技術であると考えられています。また、石炭発電は、今でも、世界各国で発電量の40%以上の比率を占める主力電源になっています。原料となる石炭は世界各地に広く存在し、日本にも相当量が埋蔵されています。しかし、CO2の排出量が多いことから、地球温暖化対策では常に問題になっており、日本でも先ごろ、環境相が火力発電所の新規計画中止を求めるなど存続の論議をよんでいます。

 したがって、この石炭火力発電を利用するためには汚染物質の排出を極力少なくする必要があります。磯子火力発電所はそのモデルとして設計・運用されている工場です。どんな施設でどのように運営されいるかをみたいということで、今回の見学になったわけです。
 見学会の参加者は26名。午前8時、朝霞市役所を出発。9時50分、横浜港の中心部を越えて磯子火力発電所に到着しました。ここはJPOWER(電源開発)の発電所ですが、すぐ隣には東京電力の火力発電所があります。この付近は横浜の繁華街に隣接していますが、巨大なエネルギー基地でもあるようです。東京湾岸には13個の大型発電所がありますが、すべて火力、中で唯一の石炭火力発電所がこの磯子です。



 訪問したのはエネルギープラザというPR部門です。すぐに所長より工場の概要説明と用意された石炭やペレットなどの原材料や燃焼過程で生成される物質の説明がありました。石炭灰などの一部は肥料になりますので参加者へのお土産になっています。続いてビデオによる発電所の紹介がありました。この工場は昭和42年から稼動している旧型設備を運転しながら、世界最先端の環境保全対策と発電効率化を目指して全面的な設備の更新を行い、平成21年(2009年)からは2台の新しい発電機による運転に完全に切り替わっているとのことです。その結果、USC(高燃焼温度と高圧力)とよばれる技術で、総出力は120万KWとほぼ倍増させながら集じん効率や排煙脱硫効率は89%から97%(2号機の場合)と向上させています。世界でも最も進んだ技術だそうです。自然環境への配慮では発電所内の緑化や隣接する発電所の排煙の滞留防止のために2号棟の一部を地下化していること。変わったところでは対岸の三渓園からの景観を考慮して2缶集合型の200メートルの大型煙突の断面を楕円上に変形しているそうです。

 そのあと、2班に分かれて、実際の工場内を見学しました。詳細に作られた工場全体の模型で専用岸壁からの原材料(石炭)の移動、石炭サイロへの搬入、ボイラーでの燃焼そしてその高温水蒸気でのタービン発電までの工程の説明を受けた後、広い構内を歩き回りましたが、特に圧倒的だったのは2台のタービン発電機が稼働している巨大なタービン建屋の内部。かなりの騒音がしますが、無人の構内ではドイツ製のタービンとそこに直結している発電機(こちらは日本製)が2台、ならんで稼動しています。この2台の総出力は120万KWです。使用する石炭は1日5000トンということで、主な輸入先はオーストラリアとインドネシアとのことです。



 一方、同じ建屋の上階にある運転センターは、ガラス越しですが静寂そのものに見えました。壁面の大型パネルに刻々の発電量が表示されていますが、ほとんどの情報は一括管理されているようで10人ほどの作業員の机の上にはPCがあるだけ、書類もコピー機もなく、かなりすっきりした感じ。以前の管理室の写真がパネルで紹介されていましたが、数十個以上のメーターが壁一杯に配置され、これはまさに圧巻。どこでもそうですが時代の流れを感じます。

 最後にボイラー等の屋上へ登りました。ここは100メートルの高さがあり、側面からはボイラーの熱風が噴き出ていて、真冬でもあたたかです。横浜港や遠く富士山まで見渡せます。楕円形の煙突はさらに100メートル頭上に見えます。近くにはいくつもの別の発電所やガスタンクが林立して、あらためて工業地帯の雰囲気です。付近一帯はすべて埋立地ですが、東京湾という地形のため津波などの災害は少ないようです。オマケですが、煙突の向こうに話題になった海上自衛隊の空母型護衛艦の姿もみえました。海上も行き交う船がいっぱいです。 このあと、一行は、同じ横浜にある「横浜港博物館」を見学しました。

2019/1/10